*Post also available in:
English
Cynata Therapeutics Ltd (サイナータ・セラピューティクス、以下Cynata社)は、間葉系幹細胞由来のiPS細胞(iPSC)の製造に関する専門技術を持つ、幹細胞医学を専門としている臨床段階の再生医療会社です。先日、Cynata社 CEOであるDr Ross Macdonaldにインタビューさせていだく機会があり、そのインタビューにおいて世界初の偉業といわれるCynata社 の移植片対宿主病(GvHD)の臨床試験のプラットフォーム技術に関してお話を伺いました。また、我々の求める到達点について、富士フイルムとの協力の重要性などについても触れました。
Dr. Ross Macdonald(Cynata社CEO)とのインタビュー
Cade Hildreth: まず、どのような経緯でCynata社との関わりを持たれることになったのでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: この30年間、私はM&Aやライセンス、また顧客開拓に焦点を合わせ製薬会社とバイオテクノロジー分野において働いてきました。そして数年前、もともと民間企業で、のちに当時のCynata社に参加することになる資本家ベンチャーグループの事をよく知るようになりました。彼らには会社を成長させ、今日のオーストラリア証券取引所にリストアップされたCynata社(ASX: CYP)にまで育てる計画 がありました。そして、2013年に彼らは私が彼らの計画に参加する意思があるかどうかを知るため、私にアプローチしてきました。その際にCEOの地位を頂き、その計画を実行していくことになりました。
Cade Hildreth: Cynata社の技術であるCymerusTMとはどのようなものなのでしょうか?また、なぜ革命的であるのでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: 様々な点において、私たちの取り組みは非常にシンプルなものです。私たちは間葉系幹細胞(MSCs)の治療使用における新たな発明をしようとしているのではなく、代わりに、私たちのテクノロジーはそれらの治療使用のための、より実用的で実用的な手段をとっています。
もちろん、多くの新しいテクノロジーと同様に、安全性と有効性が目指すゴールではありますが、「製造」というものはしばしば発明者のなかでもあとまわしにされることの多い部分です。このことが最終的な細胞製品の工業化において主要な障害物になっていると私たちは考えています。事実、あなたの読者の方々であればご存知の事と思いますが、安全かつ有効であると文章化されているにもかかわらず、製薬会社、またバイオテクノロジー企業の棚に座り、日を浴びることがない製品が多くあります。その理由は単に「非常に難しく、コストのかかる製品であるから」というものです。
第一世代の治療用の製造へのアプローチは現実的とは言えません。それは、提供された物質または前駆間葉系幹細胞、主に骨髄または脂肪組織から提供されたものを頼ります。なぜなら、商品の供給源が不十分であるため、少数の患者でさえ、治療するために十分な量の細胞を得るのに、培養中の細胞の大規模な拡大を必要とするからです。
時間とともに、重要なデータと文献は、間葉系幹細胞とその派生の文化拡大の能力は有限であるということが証明してきました。というのも、それらは実質的に数回の爆発的人口増加のあとでさえ生物学を変えることになります。それゆえドナーから提供された物質から間葉系幹細胞を抽出するビジネスモデルは産業的な観点から「崩壊」していると言えます。脳卒中、心臓血管疾患、または関節炎など(これらは間葉系幹細胞を使用して対処する)世界的な疾患に対処するために数百万回分の間葉系幹細胞を製造する場合、この第一世代のアプローチは機能しないのです。
多くのテクノロジーと同様に、小さな革命が、非常に大きな変化をもたらすことがあります。今回の場合、iPS細胞の発見および研究により多くの企業が独自の細胞に関する製品を製造する新たな手段を模索する機会を得ました。私たちの場合、当社の間葉系幹細胞製造技術は特有のもので、これまで家内産業規模であった治療用間葉系幹細胞の製造を、工業的規模にすることを可能にします。こうした点から、Cymerusが革命的であると言われています。
Cade Hildreth: Cymerusのテクノロジーを発見したのは誰だったのでしょうか?また、Cynata社がそれを取得する過程はどのようなものでしたか?
Dr. Ross Macdonald: Cymerusは幹細胞生物学と細胞生物学を研究している世界でも有力なセンターの一つである、ウィスコンシン大学マディソン校で研究が始まりました。Cynata社のCymerusテクノロジーの発見者の一人であるJames Thompsonは、 最初に胚性幹細胞を分裂させた人物で、「幹細胞をもたらした男」と呼ばれています。
James Thompsonとその同僚であるIgor Slukvin教授は、同じ研究室で研究をし、当社のテクノロジーの中核部分の発見した発明者です。 特許はすでに提出されており、これらの特許はウィスコンシン大学研究基金同窓会(WARF)によって所有されています。また、ウィスコンシン大学は、ウィスコンシン大学で発生した知的財産(IP)の商業化の責任を負っています。Slukvin教授はCynata共同設立者であり、依然として当社の事業に携わっています。
Cymerus テクノロジーの取得は非常に偶然の出来事でした。私たちは最近多分化能性幹細胞から間葉系幹細胞を導き出す過程をCell Stem Cellに論文を出版された、Cynataの創業者であるオーストラリアの企業家を持っていました。その出版物は興味深い細胞生物学に焦点を当てただけでなく、当然ながら、現在私たちが開発、研究している商業技術を可能にしたものでした。
その本人であるIan Dixonは、記事を読んだ後にWARFとコンタクトを取りました。 彼はオーストラリアの有名な起業家であり、もちろんWARF は彼の技術開発とその商業化にとても興味がありました。そして彼がその知的財産を利用した企業を創設したのがCynata治療法の始まりでした。
Cade Hildreth: なるほど。あなたはいつ参加されたのですか?
Dr. Ross Macdonald: 2013年の中頃です。その後、同年末にオーストラリア証券取引所に上場する為にIPOをしました。
Cade Hildreth: Cynata社は間葉系幹細胞を使用して肺疾患に対処する研究をしていると存じておりますが、これらの研究においてCymerusによって製造された間葉系幹細胞にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: 私たちのこれらの研究における目標は、Cymerus プロセスを使用して、製造された間葉系幹細胞が、試験管および体内の両方において確実に適切な特性を有するようにすることでした。
もちろん、間葉系幹細胞の定義は非常に広義なものです。事実、間葉系幹細胞の記述にかかわった最初の科学者Dr. Arnold Caplanは、間葉系幹細胞(MSC)は幹細胞と呼ばれるべきではないと言っていました。彼はしばしばそれらを、MSCの頭文字をとって、「薬を分泌する細胞 “Medicine Secreting Cells”」と呼んでいます。
私たちは、私たちが製造している間葉系幹細胞が試験管内において確実に正しい特性を有するということに加え、疾患に対しても、確実にデモンストレーションと同じ効果を得られるようにしたいと考えています。先ほどお話ししたように、私たちは新たな発明をしようとしているわけではなく、単に、現に存在するデータ自体を強化しようとしているのです。
喘息は今年初めに私たちが発表した前全臨床データの疾患領域です。私たちの前臨床試験の最終報告は非常に魅力的なもので、Cymerus™由来の間葉系幹細胞が喘息の3つの主要成分である気道過敏症、炎症、気道リモデリングの全てに対して有効な効果を発揮することが確認されました。
実際には、しっかりと管理された喘息は、重度の肺疾患と比べると間葉系幹細胞治療の対象となることは少なく、しっかりと管理された患者は従来の投薬で状態を制御することができるので、細胞治療を受ける必要はありません。しかし、COPDやARDSのような重度の肺疾患患者も多くいます。 これらの患者にとって、間葉系幹細胞治療は非常に重要なものなのです。
Cade Hildreth: Cytana社の世界で初の移植片対宿主病(GvHD)の臨床試験が進行中ですが、この試験の世界的な意義はどのようなものでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: Yはい、確かに同種異系iPSC由来の細胞製品の正式な臨床試験はこれが世界初です。この試験には、イギリスとオーストラリアの積極的なセンターが携わっています。これが世界的に重要であるのは、これが最初のiPSC由来同種異系製品の臨床試験であるからです。日本の高橋博士は、数年前に自己由来のiPSCの試験を実施しましたが、その後打ち切り、同種異系の製品の試験に切り替えました。その試験は今年の初めに開始されましたが、それが正式な臨床試験ではないことは理解しています。
Cynata社の臨床試験はその種のもので初の試みです。この臨床試験によるiPSC由来製品の広範な可能性を考えると、これはこの分野において非常に大きな進歩です。iPSC由来の製品(間葉系幹細胞だけでなく)に関心のある人は、実際にクリニックにそれを持ち込むことができます。それが重要な成果なのです。
間葉系幹細胞のターゲットとなるGvHD自体は全く新しいものではなく、
それは間葉系幹細胞が有効であると判明した初期の疾患の1つでした。また、Dr. Katarina Le Blancと彼女のチームは、GvHD治療のための間葉系幹細胞の臨床的潜在性への関心を高めるのに役立ちました。
ここにおいてもまた、私たちはリスクが低いことを暗示する新しいレールを燃やしているわけではありません。私たちは単に、ほかの多くの人々が私たちの前に引いてきたレールの上を走り、それを伸ばしているのです。アナロジーに言い換えれば、ジャングルにできた探検家がすでに通過した道のようなものです。私たちは後から来て、彼らの作った道を高速道路に作り替えているのです。彼らは、間葉系幹細胞が新鮮で頑丈なものであれば、GvHDに非常に効果的であることを示すために努力しました。もちろん、それら初期の
研究の段階では、十分な量の間葉系幹細胞を製造する実用的な研究はなされていませんでした。
Cade Hildreth: それは非常にエキサイティングなことですね。他にCynata社が達成した世界初のものはありますか?
Dr. Ross Macdonald: はい、私たちは同種異系cGMP iPS細胞系統製造のスケールアップを世界で初めて行いました。私たちが使用した細胞系統はNASDAQに上場している独立企業であるセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)のものでした。2年前彼らは、偶然にもCynata社の大株主でありGvHDの戦略的パートナーである富士フイルムに買収されました。しかし、それにもかかわらず、CDIは臨床使用のためのcGMPグレードiPS細胞系統を世界で初めて開発した会社となりました。世界中の多くの科学者がiPSCを実験室でのみ使用していますが、CDIは私たちが使用し、間葉系幹細胞製品の製造を可能にした臨床グレードラインのiPS細胞を開発するために尽力しました。
Cade Hildreth: 業界全体において、ほかのどの間葉系幹細胞製品が商品化されていますでしょうか?また、それらと比較し、Cynata社の間葉系幹細胞製品はどのように違うのでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: 最初に市場に参集した製品は、以前JCRが間葉系幹細胞ベースの治療薬を製造する最も初期の企業の一つであるOsirisからライセンスを受けていたTEMCELLと呼ばれる日本のJCR Pharmaの製品でした。 JCRは日本の規制当局と尽力し、現在では日本市場のGvHDの治療薬として使用されています。
私たちはTigenix社がクローン病関連瘻のための欧州に登録されている製品を持っていることも理解しています。現在それらの間葉系幹細胞製品が、大手製薬会社の関心を引くような商業的成功を達成し始めているのは非常に好ましいことです。この関心は、間葉系幹細胞治療によって対処可能な適応症の数が増えるにつれて増大するでしょう。
しかし、私たちのモデルは既存の製品とは大きく異なります。日本の製品あるTEMCELLは、ドナーの骨髄由来の間葉系幹細胞から製造されているため、先ほどお話ししたように間違いなく「第一世代」の製品となります。それに対して私たちのものはiPSCをスタート材料として使用する「第二世代」の製品です。私たちは間葉系幹細胞の大規模な拡大において、複数のドナーに頼っているわけではありません。私たちはPS細胞バンクを所有しています。Cynata社のCymerusTM テクノロジーを使用することで、細胞の増殖は、実質的に無限の自己複製能を有する多能性幹細胞であるiPSCのみで行われます。
Cade Hildreth: 多分化性能間葉系幹細胞ではなく、多能性iPSCを使用し細胞拡張を行うことの重要性はどのようなものでしょうか?
Dr. Ross Macdonald: 元々のドグマは「幹細胞」である間葉系幹細胞(MSCs)が大規模な複製が可能であるということを示唆していたのですが、残念なことにそれは事実ではないということが数年後に明らかになりました。多くの文献が、間葉系幹細胞はかなり実質的な自己再生能を有するが、細胞における重要な特徴の変化が必ずしもないわけではないことを述べています。
そのため、生存可能な間葉系幹細胞を大量生産できる一方、それらの細胞の効果および臨床効果が損なわれる可能性があります。これは、間葉系幹細胞製品の研究が進み、臨床試験段階を経て進展を開始した後に明らかになりました。GvHDの初期の研究の第一および第二試験には、少数の患者が関わりました。このような状況下においてのデータは非常に良好でした。しかし残念なことに、大量の間葉系幹細胞が必要とされる第三試験になると、細胞を広範囲に拡大しなければならず、データは魅力的とは言えるものではありませんでした。
その後、科学者たちはこの現象について説明しようと試みました。今日では、間葉系幹細胞が増幅する際にそれらが効力を失うことは非常に明らかであり、多くの文献によって検証されています。それは非常にシンプルで、iPSCなどのような多能性幹細胞を適切な条件下で拡大すると、それらは遺伝的または表現型の変化をせずに無限に自己複製することができるということでした。
そのため、Cynata社ではすべての細胞の拡大を多能性幹細胞段階で行います。最終的な製造工程は、それらの多能性幹細胞段階で拡張された細胞を間葉系幹細胞製品と比較することです。私たちが最終的に目指しているのは、それら多能性幹細胞段階で拡張された細胞を拡張されていない新しく強力な間葉系幹細胞と同等のものを製造することです。もちろん、細胞の先祖たちは非常に広範に拡大しましたが、多能性細胞は無限に拡大することができます。これは、骨髄、脂肪組織(脂肪)、臍帯、または胎盤から間葉系幹細胞を直接採取する第一世代の戦略と私たちのものを違いです。このような場合、間葉系幹細胞自体(またはその相対的な関係にあるもの)を拡張する必要があります。
Cade Hildreth: Cynata社は世界中の規制当局と幅広く交流をしてこられたと思いますが、FDA、EMAなどの代理店とのやり取りから学んだことはありますか?
Dr. Ross Macdonald: はい、初期の細胞治療企業が規制当局とやり取りをした際に直面した課題を考えると、規制機関が大幅に進化していることは明らかです。非常に初期の骨髄損傷臨床試験の事を思うと、規制当局がこれらの企業の前に置くロードブロッキングは伝説的であると言えます。
また、全臨床データの安全性を証明するために必要となるデータの量は天文学なもので、そのプロセスを経てきたMike Westのような人たちと、規制当局とのやりとりはすばらしい戦争物語のようなものでした。ありがたいことに、その頃から事情が変わってきており、代理店も科学によって成長してきています。というのも、製品が最終的に人間への使用が承認される前の、臨床前の環境での安全性を実証する最善の方法を現実的かつ実用的に考える意欲がかなり高くなってきています。
特に、日本で、幹細胞治療法に関する法律における、大幅な規制の変更が行われました。また、数年前に日本において、安全性が実証された再生医療製品に条件付きで期間限定マーケティング承認を与えるthe Pharmaceuticals and Medical Device (PMD)が導入されました。オーストラリアにも、FDA、EMA、TGAのようなPMDと同様のレベルのものがあります。
これらにより、Cynata社のような企業は、臨床研究を完了するための迅速で最善なルートをとることができます。私たちは最終的に、これらの製品が広く医療に活用され、患者や介護者のもとに届くことを願っています。
Cade Hildreth: Cynata社の提案した試験に対する扱いに、規制機関間の違いなどはありましたか?あるいは、グローバルベースで一貫性などはありましたか?
Dr. Ross Macdonald: はい、実はどこの規制機関も同じというわけではなく、それぞれの機関には特質があります。実のところ、EUの代理店、特にイギリスの代理店では少々楽に進みました。臨床試験の経過が早かったため、私たちはイギリスで最初の臨床試験を実施しました。上場企業であるため、私たちは潜在的な患者と投資家のために成果と進歩を達成させたいと考えています。イギリスにおける効果的な臨床試験の経過は私たちにとってとても貴重なものでした。また、イギリスのMHRAは、価値のある広く認められた規制機関です。
Cade Hildreth: Cynata社の追及している他の臨床試験やパイプラインの開発はどのようなものですか?
Dr. Ross Macdonald: ご存知のように、私たちは現在多くの前臨床プログラムを進行させています。もちろん、GvHD試験もありますが、現在私たちが多額の投資を行っている分野でもある、全臨床的肺疾患プログラムおよび心血管疾患の前臨床プログラムもあります。そして、私たちが臨床プログラムの次に行うのは、商業戦略です。Cynata社は提携における明確な戦略を持っていて、富士フイルムとの提携もこれによるものです。富士フイルムはGcHD試験のパートナーなので、他の治療分野のパートナーシップにも拡大していきたいと考えています。というのも、次の臨床段階における提携を推進しているところなのです。
Cade Hildreth: T富士フイルムについての質問ですが、再生医療における世界的な力として、富士フイルムのパートナーシップはCynata社にどのような影響を与えましたか?
Dr. Ross Macdonald: 一言で言うと、「巨大」でした。富士フイルムは、あなたの仰る通り、再生医療分野の主要プレーヤーの一人であり、CDIの買収および「J-Tec」として知られる日本の組織工学(Tissue Engineering Co Ltd.)への投資を通じて、幹細胞に大幅な投資をしてきました。彼らはただ一つや二つの調査ラインを追及しているのではなく、この分野において幅広いポートフォリオを持っています。
Cynata社のような若い会社にとって、富士フイルムのような業界の巨人からのバリデーションは、投資家、特にオーストラリアの投資家は非常に重要です。富士フイルムは、当社との取引に入る前に広範なデューデリジェンスを実施しました。富士フイルムが提携を決定したのは、私たちの技術が非常に期待できるものに見えたためだと確信しています。このことは他の投資家にとっても有用であったと思います。もちろん、富士フイルムとの関係がバランスシートに及ぼす影響も重要です。
富士フイルムが当社のGvHD製品のライセンスを取得するオプションを行使することを決定した場合、その製品のコストと最終的な商品化は富士フイルムの責任となり、これらの費用は当社の貸借対照表から控除されます。同様に、このプログラムが成功すれば、約$60M AUSのマイルストーン支払いと2ケタのロイヤリティ支払いを受けることになります。GvHDの製品の短期的な市場潜在力を見れば、そのロイヤリティ収入が最終利益に直面するため、近い将来、バランスシートにとって非常に重要なものになる可能性が高いです。
Cade Hildreth: なるほど、それは優れた戦略ですね。次に、Cynata社の今後5年から10年の間の長期的な目標はどのようなものですか?
Dr. Ross Macdonald: 私たちの主な目標は、Cymerusテクノロジーを可能な限り多くの治療用途に応用することです。現在、間葉系幹細胞を使用した650以上の臨床試験が進行中です。私は、それらすべてが成功するとは思いませんが、小規模から中規模程度の成功数であっても、非常に重要な結果をもたらすことになると考えています。
確かに、脳卒中や心臓血管疾患の間葉系幹細胞ベースの治療に関わっている時点で重要な研究であり、大きな関心が寄せられています。間葉系幹細胞がこれらの疾患のための安全性と有効性が証明された場合、これらの製品を商業化することの大きな課題は、十分な量の細胞を製造することだと思います。
というのも、いくつかの初期段階の試験が成功した際に、関連する製造業者がどのようにして十分な量の製品を生産し、需要を管理できるかという疑問が生じます。また、脳卒中は、グローバルベースでの罹患率および死亡率の主な原因である為、Cynata社では、間葉系幹細胞の製造、技術が治療用途に広く適用させることができるように広い範囲で検証をしていきます。
Cade Hildreth: 幹細胞をベースにした医薬品の将来についてどのようにお考えですか?
Dr. Ross Macdonald: オブザーバー、ステークホルダー、投資家、誰もが次の大きな突破口を待ち望んでいます。多くのオブザーバーは、幹細胞に基づく薬剤と30年前の単クローン抗体の革命との間に並行しています。単クローン抗体が最初に記載された頃、それらの潜在的な治療における可能性が大規模であり、非常に複雑な分子の十分な量をどのように製造するかが大きな課題でした。当時、製薬業界は主に小分子を扱っていました。当然のことながら、抗生物質の中にはかなり大きな分子が含まれていましたが、私たちはまだ生物学的製剤の医薬品開発の初期段階にあったため、これら複雑な分子をどのように製造するかは業界にとって大きな課題だったのです。
もちろん、これらの課題は、製造上のボルトネックを解決した際に解決されました。現在では、アメリカとEUで承認された40種類以上の単クローン抗体製品が世界中で販売されています。30年前に、それが可能であると考えていた人はほとんどいませんでした。
私たちは今、間葉系幹細胞ベースの治療法において、似たような状況にいます。誰もが「興味深いが、実際に機能するのか、もし機能したとして、それはどれくらい難しいものなのか」と言いますが、もしあなたがその製品を製造することができないとして、それは単にあなたがそれら製品を持っていないだけなのです。当社のテクノロジーには製造上のいわゆる“ボルトネック”を解決し、間葉系幹細胞に新しい時代を導く必要性があります。
Cade Hildreth: 私も同意します。歴史がそれ自身を繰り返すもので、すべてのタイプの市場指標があなたの仮設が確認されることを明らかにしていると思います。年々、間葉系幹細胞の科学出版物、助成金、特許および臨床試験の数が増えてきています。一般の人が細胞タイプに関する情報を探す割合も増えてきていることがGoogleトレンドからわかります。
Dr. Ross Macdonald: はい、新たな製造における“型”を導入することが私たちの目標です。
Cade Hildreth: この度はお忙しいところお時間を頂きありがとうございました。